最近の裁判例から紹介いたします。

東京高判 令3・9・15
「契約締結に当たって、居抜き店舗を借主の営業に使用できるかは原則として借主自身が調査すべきものとした事例」という裁判例がありました。

概要
 あるマンション1階の店舗を飲食店営業目的で居抜き賃借した借主の希望する営業をするためには、新規設備の導入を踏まえて天井高に問題があることが分かりました。その後、本件店舗で借主の希望する飲食店営業をすることが法的に不可能ということが分かり、借主は貸主と媒介業者に責任があるとして訴えたましたが、第1審・第2審裁判所のいずれもこの借主の請求を棄却しました。

借主の請求が通らなかった理由として
 裁判例要旨では
・借主は居抜きした店舗の設備性能が借主の営業形態に合致し、利用できるかについては法令上の制限の有無を含め原則として借主自身が契約締結にあたり調査すべきである。
・賃貸借契約の内容として、本件店舗が借主の営業形態に適合することを貸主が保証したとはいえない、また消防法令に違反することがないことを貸主が保証したということもできない。
ざっくりとですが、このような内容が記載されています。

つまり
 建物賃貸借を締結するにあたり、当該建物が借主の希望する営業ができるかについて、法令上の制限の有無を含め原則借主が調査すべきですが、このような判例が見られておりますので、建物の目的使用についての調査責任が自己にあることを認識していない借主が意外と多いということがいえそうです。

私ども、業者としてはこのようなお客様に対しては「事前に建築士等の専門家に確認を行っては?」とアドバイスをすることがトラブル発生を防ぐ一助になると思っております。